一枝言(いちえごん)

                   ※この挨拶文はいちえの原点2005年1月の前ホームページ「女将の挨拶」分を掲載しております

 

 ようやく「松富や壽いちえ」のHPを立ち上げる事が出来ました。HPの立ち上げと共にようやく「このお店はコレでやっていこう!!」との決意が固まったような気がします。いちえ(長いので略させていただきます)の正式なオープンは一昨年の9月ですが、前身は「長者庵孫助いちえ」でした。知る人は知っていると思いますが、衣棚六角にある焼酎屋さんの支店としてこの場所に誕生しました。店主の強いこだわりで調味料や食材は絶対に体に良いモノでなくてはならない!と、長者庵孫助でもずっと安心安全な食材でお客様に提供してまいりました。

来て頂いたお客様から「ここの料理はほんま美味しいな~」と言われるたびに、「それならもっとたくさんの人に食べてもらいたい」との思いが強くなり、その思いの頂点とこのお店の場所との巡り会いが重なりこのいちえが誕生しました。もう何年も人が住んでいなかった家は、朽ち果てた状態と、生活しやすいようにと現代的に手を加えられ、町家であるのに町家ではない状態でした。
「ホントにここで食べ物屋さんなんて出来るの??」と店主に何度も聞いた覚えがあります。改装してお店として使えるようにするのではなく、”元通りの町家に戻す”ので約半年の時間を費やしました。お客様からはよく「綺麗に使ってはったんやね~」と褒められますが(笑)
開店当初、「長者庵孫助」のイメージが強すぎたのと、準備不足のまま開店に至ってしまった事もあり、来ていただいたお客様には満足どころか気を悪くして帰ってしまわれた方も少なくなかったと思います。良いサービスの提供とお客様の来店数はきちんと比例するものだと実感いたしました。ただ町家を元通りに戻した事ですっかり自己満足の世界に陥ってしまい、お客様をもてなすにはほど遠い状態だったと思います。          
よく、なんで「松富や壽いちえ」って名前なの?と聞かれます。おばんざいは母から子に受継がれるもの祖祖母の松枝、祖母の富枝、母の壽美枝の名前から一文字づつを頂いてつけました。一昨年の春、店主に転機が訪れました。新しい家族の芽生えです。このお店をやっていく意味を見失いかけていた時期のことです。幼い頃から店主は母から「子供にはいいもんを食べさせなあかん!」と無添加の調味料などを使うのが当たり前だと言われて育ちました。そんな母の作る料理はお客様がうなる程美味しいものだったそうです。数年前、その母が倒れて寝たきりの状態になりました。看病の為につきっきりの父。そんな二人の意思を継いでゆきたくて「いちえ」とゆう名前が決まった事を改めて思い返しました。店主自身が「父親」となることで、憑き物がとれたように初心に戻り、一端「長者庵孫助いちえ」を閉店させることにしました。家族を大切にする事がこのお店の原点です。
有機の野菜や有機の素材、無添加の国産調味料はどうしても高い、高いけれど、なんとか努力して”体に優しいものを、たくさんの人に手軽に、たくさん食べてもらいたい”と試行錯誤の日々でした。「誰だって自分の家族や、愛する人には体にいいモン食べさせてあげたいでしょ?」そりゃそうです。もちろんそうですが、正直大変です(笑)、が、そんなお店があってもいいのではないか、と思えるようになりました。
お昼のおばんざいバイキングはそんな思いも入っています。赤ちゃんが食べても安心な食べ物、自分の子供に食べさせたいものをこれからの世の中を背負って立つ子供達に、ちょっと疲れた働くお父さん達に、おばんざいをあまり知らない若い世代の彼らに、そして子育てにがんばるお母さん達に、バリバリ働く女性達に。そして、家族と、友達と、恋人と、同僚と、少し贅沢な晩御飯をゆっくり味わっていただきたいと思っています。お店に来て下さるお客様は全て自分の家族同様だと思いおもてなししたいと心がけております。全てのお客様にご満足いただけるのが一番ですが、まだまだ勉強してゆかなければならないことも沢山あります。私自身もいちえと共に成長してゆけたら・・・と思っております。
これからも松富や壽いちえをよろしくお願いいたします。

2005年1月吉日
松富や壽いちえ 女将